現場には、白ナンバー(自家用)のダンプが数多く入ってくる。元請の車両、協力会社の車両、そして運転手が自分で持ち込む車両が混ざっている。この「当たり前の風景」に、今年の4月から法律上の緊張が走っている。
令和8年4月1日、違法な「白トラ」に運送を委託した荷主等が、新たに処罰の対象になったからだ。委託した側が問われる以上、建設工事の発注者・元請・下請のいずれもが無関係ではいられない。
そして8月20日、国土交通省不動産・建設経済局建設業課長名で、建設業団体の長あてに事務連絡が出た。件名は「建設工事において建設資材等の運搬に従事する自家用ダンプカーの貨物自動車運送事業法における取扱いについて」。現場から上がっていた**「運転者は、誰と雇用契約を結べばいいのか」**という問いに、正面から答えたものである。
4月に変わったのは「委託した側」の責任
まず前提を整理する。根拠は令和7年6月11日に公布された「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(令和7年法律第60号)で、同時に公布された「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」(令和7年法律第61号)と合わせてトラック適正化二法と呼ばれる。
このうち白トラ関連の規定について、令和7年11月21日に施行期日を令和8年4月1日とする政令が閣議決定された。報道発表資料が挙げる内容は次のとおりだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 違法な白トラの利用に係る荷主等への規制 | 荷主等が、白ナンバーのトラックで有償貨物運送を行う者(違法な白トラ事業者)に運送委託を行った場合に、新たに処罰の対象となる |
| 同上(行政の関与) | 違法な白トラ事業者に運送を委託している等の疑いがある場合、国土交通大臣から当該荷主等に要請等を行うことができる |
| 委託次数の制限 | 貨物自動車運送事業者・貨物利用運送事業者に対し、再委託の回数を2回以内とする努力義務 |
| 書面交付義務等の準用 | 運送契約締結時の書面交付義務等が、貨物利用運送事業者にも新たに課される |
ここで重要なのは、「白ナンバーのダンプを使うこと」そのものが違法になったわけではないという点だ。違法なのは、許可を持たない者が「他人の需要に応じ、有償で」貨物運送を事業として行うことであり、令和8年4月からは、その者に運送を委託した荷主等も処罰の対象に加わった、という構図だ。この線引きは貨物自動車運送事業法第2条第2項と第3条に由来し、8月20日の事務連絡も**「違法な『白トラ』行為に係る違法性の判断基準は、従前から変わらない」**と明記している。
許可が要らない2つの型と、「自ら運送」の具備要件
線引きの中身を示したのが、その前段にあたる令和8年2月10日付の事務連絡(物流・自動車局貨物流通事業課長)である。個人事業主による自家用ダンプカーの利用が多い建設現場での混乱を避ける目的で出された。
許可が不要となるのは、次の2つの型だ。
(1) 建設関連会社等が自ら所有する貨物を自ら運送する場合。 自社のニーズや発注に応じて運送が行われるのが通常であり、運送行為の対価も発生しないため、「他人の需要」にも「有償」にも当たらない。例として、土砂等販売業者が販売用に購入した土砂等を、自社と雇用関係にある従業員(期間雇用・日雇い雇用等を含む)に運搬させる場合が挙げられている。
(2) 生業と密接不可分であり、その業務に付帯するものとして運送を行う場合。 他者が所有する貨物であっても、①生業と密接不可分でその業務に付帯して行われる運送であること、②当該生業を営む者が自ら運送行為を行うこと(同一の者が生業と運送行為を一貫して行うこと)、③名目の如何を問わず、運送行為の対価としての有償性がないこと──のいずれにも該当すれば、「業としての運送」とは言えないと整理される。建設工事を請け負った会社が、その工事で発生した残土等を自社の従業員に運搬させる場合が例示されている。
そして両者に共通する具備要件が、**「雇用関係にある従業員たる運転者に運送行為を行わせること」**だ。雇用関係の有無は契約等の形式だけでなく、使用従属性等の実態も踏まえて判断されるとして、主な判断基準が並ぶ(以下は事務連絡の記載を引用・再構成した)。
- 建設関連会社等と運転者との間で労働契約が締結されているか
- 運転者に対して労働条件通知書の交付がなされているか
- 運転者に対する報酬が給与として支払われているか
- 社会保険等の加入が必要な場合に、加入や支払等の適切な措置が講じられているか
- 運転者が持ち込む自家用ダンプカーを使用する場合、運転者と会社との間で当該車両の業務上使用契約書の締結等の適切な措置が講じられているか
- 運転者が当該会社等の指揮命令下にあるか
なお2月10日の事務連絡は、法の許可が不要な場合であっても、運転業務に主として従事する労働者には**「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)が適用される**点にも注意を促している。許可が要らない=労務管理が緩くてよい、ではない。
8月20日の本題──雇用契約を結ぶ主体の5区分
ここまでが従前の整理で、残っていたのが「では個別具体の運搬について、運転者は誰と雇用契約を結ぶべきなのか」という実務の問いだった。8月20日の事務連絡は、貨物自動車行政を所管する物流・自動車局、および労働行政を所管する厚生労働省と調整済みであることを明記したうえで、一般論としての区分を示している。以下は事務連絡の表を引用したものだ。
| 運搬の形 | 雇用契約を締結する主体 |
|---|---|
| (1) 資材業者が所有する資材等を運搬する場合 | 運転手と資材業者 |
| (2) 建設業者が所有する資材等を運搬する場合 | 運転手と建設業者 |
| (3) 資材業者が、生業として自ら販売した資材等を販売先の建設業者への引渡しのために運搬する場合 | 運転手と資材業者 |
| (4) 建設業者が生業として請け負った建設工事の施工に必要な、発注者が支給する資材等を当該建設業者が運搬する場合 | 運転手と建設業者 |
| (5) 運転手自らが所有する資材等を運搬する場合 | 雇用契約不要 |
読み解き方はシンプルだ。(1)(2)は「貨物を所有している側」と結ぶ。(3)(4)は所有者が別にいても、その運送が生業に付帯している側——売った資材を引き渡す資材業者、支給材を受け取って施工する建設業者——と結ぶ。そして(5)は運ぶ物が運転手自身の所有物なので、そもそも他人の需要ではない。
つまり「誰の仕事に付帯する運搬なのか」を先に決めれば、雇用契約の相手はおのずと定まる、という構造になっている。
1日に複数の事業者を回る日は、事業者ごとに契約する
もうひとつの論点が、1日に複数事業者の建設資材等を運搬する場合の書類の出し方だった。午前は資材業者の砕石、午後は建設業者の残土、という働き方は珍しくない。
事務連絡の答えは、個々の事業者ごとに労働契約を締結するというものだ。そのうえで、それぞれの事業者が、日雇いに係る労働条件通知書(厚生労働省が様式を公開)と、車両使用通知書(今般、国土交通省物流・自動車局において様式を作成)に基づき、これらの通知を併せて行うことが適切だとしている。様式は国交省サイトからダウンロードできる。
車両使用通知書という様式が新たに用意されたのは、先の判断基準にあった「持ち込み車両の業務上使用契約書等の適切な措置」を、日々の運用に落とし込みやすくするためだろう。1日に2社を回るなら、労働条件通知書と車両使用通知書がそれぞれ2社分そろう、というのが到達点になる。
試験ではこう問われる/現場ではこう効く
試験の視点で見ると、この話は既存の頻出論点と素直につながる。
- 労働基準法の労働契約 — 1級土木(令和7年 No.55、令和3年 No.50)や2級建築(令和3年 No.47)で繰り返し出題される定番。「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」という第15条の趣旨が、今回の労働条件通知書そのものだ。
- 建設業法の請負契約 — 1級土木(令和7年 No.60)ほか。書面主義と、実態に即した契約関係の把握という発想は共通している。
- 建設発生土・建設副産物 — 1級土木(令和8年 No.19)ほか。残土をどう運ぶかは、そのまま建設副産物の適正処理の問題でもある。
構造として似ているのが、廃棄物処理法の自社運搬(自己運搬)だ。排出事業者が自らの現場で発生した産業廃棄物を自社の車両・自社の社員で運ぶ場合、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要になる——施工管理技士試験でも頻出の特例である。今回の「自ら所有する貨物を、雇用関係にある従業員に運ばせるなら許可不要」も、「自ら/他人」で許可の要否が分かれるという同じ骨格を持っている。両者を並べて覚えると定着しやすい。
現場実務としては、確認すべき点は多くない。①その運搬は誰の生業に付帯しているのか、②運転手はその会社と労働契約を結び、給与で支払われ、指揮命令下にあるか、③持ち込み車両なら使用に関する書面があるか、④日々雇用なら労働条件通知書と車両使用通知書が事業者ごとにそろっているか。 この4点を施工体制の確認と同じタイミングで見ておけば、委託した側として問われる余地はぐっと小さくなる。
逆に危ないのは、書類上は請負や「運賃」の名目でありながら、実態は自社の指揮命令下でダンプを走らせている、というねじれだ。8月20日の事務連絡が「違法性の判断基準は従前から変わらない」とわざわざ念を押しているのは、形式ではなく実態で判断されるという原則が動いていないからにほかならない。
出典
- 国土交通省「建設現場等で使用する自家用ダンプカーの貨物自動車運送事業法における取扱いについて」(2月10日・5月1日・8月20日の各事務連絡と、労働条件通知書・車両使用通知書のひな形を掲載)
- 国土交通省 不動産・建設経済局建設業課「建設工事において建設資材等の運搬に従事する自家用ダンプカーの貨物自動車運送事業法における取扱いについて」(令和8年8月20日付 事務連絡)
- 国土交通省 物流・自動車局貨物流通事業課「自家用ダンプカーの貨物自動車運送事業法における取扱いについて」(令和8年2月10日付 事務連絡)
- 国土交通省 物流・自動車局貨物流通事業課「違法な『白トラ』への規制が令和8年4月1日から強化されます」(令和7年11月21日 報道発表)
- 国土交通省「トラック適正化二法について」

