舗装の試験勉強で必ず出てくる「疲労破壊輪数」「塑性変形輪数」「平たん性」。この3つの数値を定めている省令が、平成13年(2001年)の制定以来はじめて全部改正されようとしています。意見募集(パブリックコメント)は2026年8月5日に締め切られ、公布は令和8年8月下旬、施行は令和9年(2027年)4月1日が予定されています。
驚くのは改正案の中身です。あれだけ細かく並んでいた数値が、省令本体からきれいに消えます。何が起きているのかを、法令の階層から順に整理します。
舗装の基準は4階建てになっている
まず、舗装の基準がどこに書かれているかを押さえておくと、今回の改正の位置づけが一気に分かります。国土交通省の資料では、次の4階層で整理されています。
| 階層 | 名称 |
|---|---|
| 法律 | 道路法 第29条(道路の構造の原則)・第30条(道路の構造の基準) |
| 政令 | 道路構造令 第23条(舗装) |
| 省令 | 車道及び側帯の舗装の構造の基準に関する省令(平成13年国土交通省令第103号) |
| 技術基準 | 舗装の構造に関する技術基準(平成13年6月29日 都市局長・道路局長連名通達) |
その下に、『舗装の構造に関する技術基準・同解説』『舗装設計施工指針』『舗装性能評価法』などの実務書がぶら下がる構造です。今回は、このうち省令と技術基準の2階層が同時に改定されるという、かなり大きな動きになります。
現行省令の中身を思い出しておきましょう。定義(第1条)に疲労破壊輪数・塑性変形輪数・平たん性・浸透水量・舗装計画交通量を置き、第3条で疲労破壊輪数を舗装計画交通量に応じて「3,000台/日以上なら10年につき3,500万回以上」など5段階で規定。第4条で塑性変形輪数を道路の区分と交通量に応じて3,000回/mm・1,500回/mm・500回/mmと定め、第5条で平たん性を2.4mm以下、第6条で浸透水量を1,000mL/15秒(その他は300mL)としています。まさに「数値の省令」でした。
改正案では、省令が3か条の「性能の言葉」になる
これに対し、改正案の本文はわずか3か条です(附則を除く)。
第1条は、道路構造令第23条第2項に基づく基準を、性能保持想定期間——車道等を新設・改築してから、第2条・第3条に定める性能を確保するために維持・修繕が必要と認められる状態に達するまでの期間として設計上想定される期間——について国土交通大臣が定める基準に適合するもの、と定めます。数値そのものではなく、「その性能が何年もつ想定か」を大臣が定める基準に委ねる建て付けです。今回あわせて改定される技術基準がこれに当たる見込みですが、現行の技術基準は局長連名通達であり、新しい基準がどの法形式で出るかは公布時に確認が必要です。
第2条は、輪荷重を支持するために必要な舗装の性能として、路床・床版等と一体となって輪荷重を十分に支持するために、(1) 輪荷重を十分に分散させて路床等に伝えること、(2) 舗装内部への雨水等の浸入が最小限度であること、(3) 路床等への雨水等の浸入が最小限度であること、の3つを掲げます。
第3条は、舗装路面の性能として、(1) 自動車が車道等に沿って通行する場合に安定した走行を確保できること、(2) 自動車が進路の変更をする場合に安定した走行を確保できること、(3) 舗装路面の排水を速やかに行えること、を掲げます。
現行省令では、浸透水量は「雨水を路面下に円滑に浸透させることができる構造とする必要がある場合」に限って適用される上乗せ基準(第2条第2項・第6条)でしたが、改正案では「舗装路面の排水を速やかに行うことができるもの」が路面の性能として無条件に並んでいます。ただし両者が同じ概念を引き継いだものかどうかは案文からは読み取れず、ここは公布後の技術基準待ちです。
附則には経過措置があり、施行日前に行った設計による道路については、改正省令に適合しない部分に当該規定を適用せず、なお従前の例によるとされています。2027年3月までに設計を終えた案件が、施行日に一斉に不適合になるわけではありません。
狙いは「設計の目標」と「修繕の判断」を同じ言葉にすること
なぜ数値を省令から外すのか。答えは技術基準(案)の資料にあります。現行では、設計で使う性能指標と、点検で使う管理指標が別モノだったのです。
資料は現行と新基準の対比を、はっきり「≠」の記号で示しています。
| 現行の性能指標(設計) | 点検要領(直轄版)で診断区分Ⅲ=要修繕となる管理指標 |
|---|---|
| 疲労破壊輪数(ひび割れ率20%相当の輪数) | ひび割れ率 40%以上 |
| 塑性変形輪数(1mm変位までの輪数) | わだち掘れ量 40mm以上 |
| 平たん性(施工直後の値のみ規定) | IRI 8mm/m以上 |
設計は「新品の状態で、あと何回輪荷重に耐えるか」を見ていて、点検は「供用中の路面が今どれだけ傷んでいるか」を見ている。同じ舗装を語っているのに、モノサシが噛み合っていませんでした。とりわけ平たん性は施工直後の値しか規定がなく、供用後の悪化を設計で扱えなかった、と資料は指摘しています。
新しい技術基準(案)は、この断絶を埋めにいきます。舗装に求められる機能を「基盤と一体で輪荷重を支持する(構造としての)機能」「車両が安定して走行できる(路面としての)機能」「道路の使用目的との適合性や環境の観点から必要に応じて定める機能」の3つに整理したうえで、性能ごとに性能指標を割り当てます。資料に挙げられた例は次のとおりで、平成29年(2017年)から始まった舗装点検の管理指標と値ごとそろえた形です。
- 耐水性能・防水性能 → ひび割れ率 40%以下
- 横断方向移動時の走行安定性能 → わだち掘れ量 40mm以下
- 縦断方向移動時の走行安定性能 → IRI 8mm/m以下
さらに、性能を回復させることが望ましい状態を性能回復推奨状態、そこに至るまでの期間を性能保持想定期間と定義し、設計時にライフサイクルコストやCO2を評価できる枠組みを置きます。性能保持想定期間の算出方法は「材料物性法(室内試験の物性値から数値計算)」「実大経験法(実大供試体の試験や実道の供用実績)」「推定みなし法(性能を代表する室内試験結果と既存の舗装構造との比較)」の3分類で、材料物性法のシミュレーションが十分確立していない現時点では、当面は実大経験法と推定みなし法を用いることが想定されています。
ここは新技術にとって大きな意味があります。現行の疲労破壊輪数は原則として実地測定(または同一舗装構成の供試体による測定)で、実大の舗装を造る促進載荷試験が前提となるため性能評価のハードルが高い、と資料は率直に認めています。曲げ疲労試験のような室内試験で既存材料との優劣を示し、既存構造の期間から換算する「推定みなし法」が使えるようになれば、新材料が基準の土俵に上がるまでの時間が短くなるわけです。
なお、改定案への意見照会では「コンクリート舗装の性能指標の規定がない」との指摘があり、性能指標の代表例としてひび割れ度を追加する修正が行われています。「極端に短い性能保持想定期間の舗装構造を除外する」旨の修正も入りました。
この流れは、直近の別の動きともつながります。国土交通省は2026年7月30日、「舗装点検、道路巡視の支援技術」の公募を開始しました(応募期間は同年8月31日まで)。舗装点検で公募対象となっている計測項目は、まさにひび割れ率・わだち掘れ量・IRIの3つ。基準側でモノサシを統一し、計測側でそのモノサシを測る技術を集める、という両輪です。
再生材と低炭素材料も「設計で検討する」対象に
改定方針にはもう2本の柱があります。
ひとつは再生材料のリサイクルの質です。資料によれば、アスファルト・コンクリート塊は約2,070万トンが発生し、再資源化率は99.5%とほぼ100%に達しています。しかし内訳を見ると再生アスファルト合材が約1,600万トンに対し、再生砕石が約470万トン。「再生As合材」ではなく「再生砕石」として再資源化されている割合が23%あり、より付加価値の高い水平リサイクル(使用済製品を原料に用いて同種の製品を製造するリサイクル)の促進が必要だとしています。建設廃棄物全体のリサイクル率は1990年代の約60%から2018年度に約97%まで上がっており、次の課題は率ではなく質だ、という整理です。改定では、建設副産物の適正かつ積極的な再資源化の推進を「舗装の構造の原則」として規定し、設計時に建設副産物の使用等を積極的に検討することを定めるとしています。
もうひとつは低炭素材料・工法です。ライフサイクルCO2も評価できる設計の枠組みを示すとともに、アスファルト混合物の中温化技術などを設計・施工時に積極的に検討することを示します。道路工事における低炭素アスファルトの合材出荷率は、2013年度の約0.3%から2022年度0.5%、2030年度に6%という目標が掲げられています。
試験ではこう問われる/現場ではこう効く
試験対策としては、当面は現行基準がそのまま出題範囲です。施行は2027年4月1日の予定であり、資格試験は各実施機関が定める基準日の時点で施行されている法令に基づいて出題・採点されるのが一般的です(基準日は試験機関の公表によります)。疲労破壊輪数(49kNの輪荷重でひび割れが生じるまでの回数)、塑性変形輪数(表層温度60℃で1mm変位するまでの回数)、平たん性2.4mm以下といった数値は、引き続き確実に押さえるべき得点源です。1級舗装では性能指標と測定方法の組合せ(ホイールトラッキング試験=塑性変形輪数、FWD=疲労破壊輪数の推定、3mプロフィルメータ/路面性状測定車=平たん性、現場透水量試験器=浸透水量)が繰り返し問われています。
そのうえで、「ひび割れ率40%・わだち掘れ量40mm・IRI 8mm/m」という点検側の3点セットは、いま覚えておく価値が跳ね上がったと言えます。2027年度以降、設計と維持管理の共通言語になる数字だからです。
現場実務では、効いてくるのは主に3点でしょう。第一に、修繕の判断基準と設計の目標が同じ言葉になること。点検結果を「設計が想定した期間に対して早いのか遅いのか」で説明できるようになります。第二に、性能保持想定期間という形で、耐久性が設計図書に乗ること。ライフサイクルコストの比較が「勘」ではなく設計の手続きになります。第三に、新材料・新工法の提案が通りやすくなる可能性です。実大の試験施工なしに室内試験から換算する道が開ければ、これまでハードルの高さで見送られてきた技術に出番が生まれます。
省令案は令和8年8月下旬の公布が予定されています。技術基準の改定内容も含め、公布後の告示・通達等の正式文書で確定値を確認してください。
出典
- e-Govパブリック・コメント:車道及び側帯の舗装の構造の基準に関する省令の全部を改正する省令案に関するパブリックコメントの募集について(案件番号155260604・公示日2026年7月6日・締切2026年8月5日)(案文・概要・意見公募要領の各PDFは同ページから入手できます)
- 国土交通省道路局:舗装の構造に関する技術基準(案)について(社会資本整備審議会 道路分科会 道路技術小委員会 令和7年8月26日 資料1-2)
- e-Gov法令検索:車道及び側帯の舗装の構造の基準に関する省令(平成13年国土交通省令第103号)
- 国土交通省:「舗装点検、道路巡視の支援技術」を公募します(令和8年7月30日)

