舗装の設計は長いあいだ「丈夫な層構成をいかに組むか」が主役でした。その土台となる**「舗装の構造に関する技術基準」**が、2001年(平成13年)に性能規定型へ移行して以来、はじめて本格的に改定されようとしています。国土交通省は2025年(令和7年)8月26日の社会資本整備審議会・道路分科会「道路技術小委員会」で改定方針を示し、了承を得ました。設計の軸を「作った直後の品質」から「供用中の性能」へと移し、ライフサイクルでのコストとCO2の評価、低炭素材料・再生材の活用を正面から位置づける内容です。受験勉強の「性能指標」、現場の「設計・維持管理」の双方に効くテーマなので、何がどう変わるのかを整理します。
背景:2001年に「性能規定」、今回はその初めての本格改定
舗装には法令・基準の階層があります。道路法(第29・30条)と道路構造令(第23条)が大枠を定め、その下に「車道及び側帯の舗装の構造の基準に関する省令」(平成13年)、さらに具体の技術指針として**「舗装の構造に関する技術基準」**(平成13年6月29日の都市局長・道路局長連名通達)が置かれています。今回改定の対象は、この通達である技術基準です(道路技術小委員会 資料1-2)。
2001年の改定は、それまでの「仕様」中心から性能規定型への大転換でした。疲労破壊輪数・塑性変形輪数・平たん性といった性能指標を満たせば、用いる材料や工法は限定しない——という考え方で、新技術が入りやすい枠組みをつくった改正です。ところが、その性能を**「いつ評価するか」**は施工直後が中心で、供用後に性能がどう保たれていくか、生涯にわたる費用や環境負荷をどう見るか、までは十分に踏み込めていませんでした。約四半世紀の運用を経て、「設計と維持管理を一本の線でつなぐ」ための見直しが今回の主眼です。
何が変わる?──改定の5つの方針
国交省が示した改定方針は、おおむね次の5点に整理できます(資料1-2)。
- 舗装の性能の明確化:舗装に求める機能を「(A) 基盤と一体で輪荷重を安定して支える構造機能」「(B) 車両が安定して走行できる路面機能」「(C) 道路の使用目的や環境への影響から必要に応じ定める機能(騒音低減など)」の3つに整理し、それぞれに性能を定める。時代のニーズに応じた新しい性能も追加で設定できるようにする。
- 設計と管理の整合:性能を「施工直後」ではなく「供用中」の状態で規定する。供用中の性能を表す指標(性能指標)を各性能について設定する。
- ライフサイクルを考慮した設計:各性能について「回復すべき状態(性能回復推奨状態=この状態を超えたら修繕等で回復させるのが望ましい限界)」を設定し、そこに至るまでの耐久性(性能保持想定期間)を設計時に評価する。あわせて、優れた新技術を速やかに評価・実装できるよう、実大舗装だけでなく室内試験に基づく評価も可能とする。
- 長寿命化・低炭素材料/工法によるCO2削減:ライフサイクルを通じたCO2の評価ができる枠組みを構築し、設計時にライフサイクルコストと併せて評価する考え方を提示。中温化技術などの低炭素材料・工法を設計・施工の段階で積極的に検討することを規定する。
- 再生材料の適切なリサイクルの促進:アスファルト・コンクリート塊等の建設副産物の再資源化を「構造の原則」として位置づけ、設計時に積極的な検討を求める。
背景には、国土交通省が進める道路分野の脱炭素方針があります。原典資料は、その根拠として「道路におけるカーボンニュートラル推進戦略(骨子)」(令和6年8月)などを挙げています(資料1-2)。低炭素な舗装材料の代表である中温化アスファルトの合材出荷率は、同資料によれば2022年度で約0.5%(2013年度 約0.3%)にとどまり、2030年度の目標は6%と設定されています(資料1-2)。今回の改定は、こうした技術を「設計で正当に評価し、現場で使いやすくする」ための制度的な後押しでもあります。なお適用時期については、日経クロステックが「実際の設計などへの適用開始時期は未定」と報じる一方、環境ビジネスオンラインは、改定後の基準が令和8年(2026年)4月1日以降に新たに着手する設計から適用される予定と報じています。
試験ではこう問われる
舗装の性能規定は、1級・2級の舗装はもちろん、土木の道路分野でも頻出です。とくに**「性能指標とその測定方法の組合せ」**は定番で、疲労破壊輪数・塑性変形輪数・平たん性(IRI)・浸透水量と、それぞれの試験法・測定法を結びつけて問われます。改定で軸となる「供用中の性能」「ライフサイクル」「低炭素・再生材」は、いずれも既存の出題範囲の延長線上にあります。
- 性能指標:わだち掘れ=塑性変形(流動)、ひび割れ=疲労破壊、というように「損傷の種類」と「原因・対応する性能」を結びつける問題が定番です。
- 再生材:再生路盤材料の修正CBRや、アスファルトコンクリート再生骨材の配合率と旧アスファルトの性状など、「再生材の品質」を問う出題が増えています。
- 構造設計(TA法):等値換算厚(TA)で必要厚を確かめる考え方は、改定後も設計の基礎として残ります。
“暗記”ではなく「なぜその性能を満たす必要があるのか(供用中に何が起きるのか)」で理解しておくと、改定後の新しい観点にも対応しやすくなります。
現場ではこう効く
施工管理の実務には、次のような形で効いてきます。
- 設計と維持管理が一本の線でつながる:「性能保持想定期間」という形で“いつ修繕が必要になるか”が設計段階の根拠として示されるため、維持管理計画・修繕時期の説明がしやすくなります。出来形管理だけでなく、「供用性能をどう確保するか」までが管理の視野に入ります。
- 新材料・新工法が採用されやすくなる:ライフサイクルコスト(LCC)とCO2(LCCO2)で評価する枠組みが入ると、初期費用が高くても長寿命・低炭素なら正当に評価できます。中温化アスファルトや再生合材を「環境配慮だから」ではなく「生涯費用と性能で有利だから」採用する、という説明が通りやすくなります。
- 室内試験での性能評価が後押しに:実大の試験施工を待たずに室内試験で性能を評価できる道が開けると、地域材料や新工法の現場実装が早まります。
- 再生材の活用が“原則”に:建設副産物の再資源化が構造の原則に位置づけられることで、再生骨材・再生合材の使用を前提とした設計・積算・施工計画が標準になっていきます。
「供用後25年の総コストと総CO2で語る舗装」へ——発注図書の読み方も、現場での材料選定の根拠も、この改定を機に少しずつ変わっていきます。施工管理技士の試験勉強で身につける「性能指標」と「再生材・低炭素材料」の知識は、そのまま現場の判断材料になります。
出典
- 国土交通省「舗装の構造に関する技術基準(案)について」(社会資本整備審議会 道路分科会 道路技術小委員会 資料1-2、令和7年8月26日):https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001906787.pdf
- 日経クロステック「舗装の技術基準改定、国土交通省委員会が了承 要求性能刷新し再生材の使用促進」:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/02382/
- 環境ビジネスオンライン「道路の技術基準改定、ポイントは脱炭素化 国交省の道路技術小委」:https://www.kankyo-business.jp/column/cea5f088-4205-42b8-baa9-b08c7fedea9a
※本記事は公表資料・報道をもとに要約したものです。改定の最終的な内容・適用時期は、国土交通省の正式な通達・告示等でご確認ください。

