「環境にやさしいコンクリート」は、もう特別なものではなくなりつつある。国土交通省は2025年4月21日、直轄の土木工事を対象とした「土木工事の脱炭素アクションプラン」を公表した。ここで示されたのは、2027年度以降、低炭素型コンクリートの使用を(用途を限定しながら)原則化するという明確な方針だ。コンクリートは現場でもっとも身近な材料であり、施工管理技士にとっては配合・打設・養生のすべてに関わる。今回は、この動きを「混和材」という試験頻出キーワードと、現場の段取りの両面から読み解く。
なぜコンクリートが脱炭素の主役なのか
2050年カーボンニュートラルに向け、建設業も例外ではない。とくにコンクリートは、原料であるセメントの製造時に大量のCO2を排出する。セメントは石灰石を高温で焼成してつくるため、燃料由来のCO2に加え、石灰石が分解する過程そのものからもCO2が出る。つまり「セメントを使う量を減らす」ことが、そのまま排出削減に直結する。
アクションプランは、この課題に「3本柱」で挑む。すなわち、(1)建設機械の脱炭素化(燃費基準を満たす建機やGX建設機械=電動建機の導入)、(2)コンクリートの脱炭素化、(3)その他建設技術の脱炭素化(低炭素アスファルトやグリーンスチール等)である。事業者が直接排出する建機の燃料(スコープ1・2)と、購入する材料に紐づく排出(スコープ3)の両面から攻めるのが特徴だ(国土交通省)。
「低炭素型コンクリート」とは──混和材でセメントを置き換える
ここで主役になるのが混和材だ。低炭素型コンクリートの基本的な発想は、ポルトランドセメントの一部を、産業副産物である高炉スラグ微粉末(製鉄所の副産物)やフライアッシュ(石炭火力発電所で出る石炭灰)に置き換えること。これらは焼成由来のCO2をほとんど伴わずに「結合材」として働くため、置換した分だけセメント由来のCO2が減る。
アクションプランでは、**セメント分を45%以下まで下げる(=高炉スラグ微粉末等で55%以上を置換する)**水準の製品を試行工事で検証し、市場性を確かめたうえで原則化していく段取りが示されている。
どこまで減らせるのか。先行事例として、清水建設はUBE三菱セメントと共同で、セメントの約80%を高炉スラグ微粉末に置換した環境配慮型コンクリートを開発している。CO2排出量は設計基準強度33N/mm²の場合で従来の約295kg/m³から約69kg/m³(約8割減)に下がる一方、フレッシュ性状や強度は普通コンクリートと同等を確保し、マスコンクリートで問題になりやすい温度ひび割れ抵抗性にも優れるという(清水建設)。「環境のために性能を諦める」段階は終わり、実用域に入ってきたことがわかる。
「測る」仕組みも動き出す──GHG算定マニュアル
脱炭素は「使う」だけでなく「測る」仕組みとセットだ。国土技術政策総合研究所(国総研)は2024年6月6日、**「インフラ分野における建設時のGHG排出量算定マニュアル案」**を公表した。これは、施工段階で現場から出る温室効果ガスや、脱炭素技術による削減量を、統一した考え方で算定するためのものだ。
これまでは「どれだけ減らせたか」を測る物差しがバラバラだった。共通のマニュアルと排出原単位データベースが整えば、低炭素技術の効果が公平に評価され、発注のインセンティブにつなげやすくなる。現在は試行とデータベース整備を進める段階で、本格運用に向けた準備が進んでいる(国土交通省)。「低炭素型コンクリートを使う(2027年度〜原則化)」と「排出量を算定して評価する」が両輪で進む、と理解しておきたい。
試験ではこう問われる
混和材料は、土木の学科でほぼ毎年問われる定番だ。低炭素化の流れを知っておくと、単なる暗記が「なぜそうなるか」の理解に変わる。押さえどころは次のとおり。
- フライアッシュ: 球形の粒子がボールベアリングのように働き、ワーカビリティーを改善して単位水量を減らせる。水和熱を低減し、長期強度を増進、アルカリシリカ反応の抑制にも効く。一方で初期強度の発現は遅く、十分な湿潤養生が前提になる。
- 高炉スラグ微粉末: 単独では固まりにくいが、セメントのアルカリ刺激で硬化する潜在水硬性をもつ。水和熱の低減、水密性・塩化物イオン浸透抵抗の向上、長期強度増進が利点。こちらも初期強度発現は遅めで、養生がものを言う。
「水和熱を下げたいマスコンクリートに有利」「初期強度はやや遅く湿潤養生が重要」という性質は、低炭素化の理由そのもの。出題ではフライアッシュと高炉スラグ微粉末の効果の取り違えや、「初期強度が増進する」といった逆の記述がひっかけになりやすい。関連する過去問(下部リンク)で、選択肢の言い回しに慣れておきたい。
現場ではこう効く
原則化が進めば、現場の段取りも変わる。ポイントは3つ。
第一に配合と養生。混和材を多く使うほど初期強度の発現が遅れがちなので、脱型・載荷の時期や湿潤養生の管理がよりシビアになる。寒中・暑中の温度管理を含め、養生計画を従来以上に詰める必要がある。
第二に調達。高炉スラグ微粉末やフライアッシュは地域や時期で供給量に差がある。配合変更には生コン工場・骨材・混和材メーカーとの早期調整が欠かせず、前広な発注計画が品質と工程を左右する。
第三に記録(エビデンス)。GHG算定マニュアルが本格運用に入れば、「何を、どれだけ使い、どれだけ減らしたか」を示す記録が、総合評価などで効いてくる。配合計画書・出荷伝票・養生記録といった日々の施工管理データが、そのまま脱炭素の証跡になる。施工計画と品質管理を丁寧に回している現場ほど、この変化に強い。
低炭素型コンクリートは、特別な「エコ材料」ではなく、これからの標準仕様へと近づいている。混和材の理屈を試験で理解しておくことは、合格のためだけでなく、数年後の現場でそのまま武器になる。
出典
- 国土交通省「土木工事の脱炭素アクションプラン 〜建設現場のカーボンニュートラルに向けて〜」(2025年4月21日公表)
- 国土交通省 国土技術政策総合研究所「インフラ分野における建設時のGHG排出量算定マニュアル案」(2024年6月6日公表)
- 清水建設「セメントの約80%を高炉スラグ微粉末に置換した環境配慮型コンクリートを共同開発」(2024年4月25日)

