舗装の世界の「ものさし」が、約24年ぶりに引き直されようとしています。国土交通省は、平成13年(2001年)以来となる 「舗装の構造に関する技術基準」 の改定方針を、令和7年(2025年)8月26日の社会資本整備審議会 道路分科会 道路技術小委員会 で提示し、了承を得ました(舗装の構造に関する技術基準(案)について/国土交通省)。25年度内に改定作業を終えることを目指しており、舗装施工管理技士の試験でも現場でも効いてくるテーマです。本記事では一次情報(国交省)をもとに、何が変わるのかを整理します。
そもそも「技術基準」とは
舗装の決まりごとは、上から 道路法(第29条 構造の原則・第30条 構造の基準・第42条 維持修繕)→ 道路構造令(第23条 舗装)→ 省令 → 技術基準 → 解説書・指針・便覧 という階層で組み立てられています(道路技術分野(舗装)/国土交通省)。
今回見直されるのは、このうち 「舗装の構造に関する技術基準」(平成13年6月29日 都市局長・道路局長連名通達)です。舗装設計施工指針 や 舗装設計便覧・舗装施工便覧 といった、受験勉強でおなじみの実務資料の“親”にあたる文書が、約24年ぶりに刷新されるということです。
改定の背景──「作って終わり」から「使い続ける」へ
国交省が挙げる見直しの必要性は、おおむね次の通りです(資料1-2)。
- 道路利用者に提供するサービスや、舗装に求められる性能を 明確に する。
- 設計と維持管理を整合 させる(どの状態になったら修繕すべきかを設計段階で示す)。
- 新材料・新工法を、ライフサイクルコスト(LCC) に照らして正しく評価できるようにする。
- 循環型社会に向けた 再生アスファルト合材 のさらなる再生利用と、脱炭素に向けた 低炭素材料 の導入促進(令和6年12月に追加された論点)。
ポイントは、舗装を「施工直後の出来ばえ」で語るのではなく、供用しながら性能を保ち続ける構造物 として捉え直す姿勢です。
改定方針の5本柱(かみ砕き)
① 舗装に求める性能の明確化
舗装に求められる大枠の機能を、A:荷重を支える(構造としての)機能、B:車両が安定して走れる(路面としての)機能、C:使用目的や環境への影響に応じて定める機能 の3つに整理し、それぞれに個別の性能を定めます。Aには「荷重分散性能」「耐水性能」、Bには「横断方向の走行安定性能(わだち掘れ)」「縦断方向の走行安定性能(凹凸)」、Cには「騒音低減性能」などが対応します。時代のニーズに応じた新たな性能を追加できる枠組みにする点も特徴です。
② 設計と管理の整合(ここが試験の急所)
現行基準には、「設計上どの状態になったら修繕すべきか(性能の限界状態)」が定義されていませんでした。新基準では性能ごとに 限界状態となる値 を定め、平成29年から始まった舗装点検の管理指標(ひび割れ率・わだち掘れ量・IRI)と整合させます。
具体的には、現行の性能指標が次のように置き換わるイメージです。
| 現行の性能指標 | 新基準で対応する指標(限界状態の値) |
|---|---|
| 疲労破壊輪数(ひび割れ率20%相当の輪数) | ひび割れ率 40%以下 |
| 塑性変形輪数(1mm変位までの輪数) | わだち掘れ量 40mm以下 |
| 平たん性(施工直後の値のみ規定) | IRI 8mm/m以下 |
つまり、これまで「設計で使う指標」と「点検(維持管理)で使う指標」がバラバラだったものが、同じものさしでつながる わけです。
③ ライフサイクルを考慮した設計
舗装は供用とともに性能が低下します。新基準では、性能を回復させることが望ましい 「性能回復推奨状態」 と、そこに至るまでの 「性能保持想定期間」 を設計時に見込みます。これにより、より現実的なLCCや環境負荷の評価が可能になります。あわせて、優れた新技術を早く現場へ届けるため、実大の舗装だけでなく 室内試験に基づく評価 も可能とする考え方が盛り込まれます。
④・⑤ 長寿命化・低炭素化と、再生材リサイクルの促進
ライフサイクルを通じたCO₂評価の枠組みを整え、中温化技術 などの低炭素材料・工法を設計・施工時に積極検討することを規定します。さらに、アスファルト・コンクリート塊などの建設副産物の再資源化を 「構造の原則」 として位置づけ、再生アスファルト合材の利用拡大を後押しします(資料1-2)。
試験ではこう問われる
舗装施工管理技士(1級・2級)や土木施工管理技士の舗装分野では、疲労破壊輪数・塑性変形輪数・平たん性 という現行の性能指標が頻出です。今回の改定で、これらが点検側の ひび割れ率・わだち掘れ量・IRI とそろう流れを押さえておくと、設計と維持管理の知識が一本につながります。
数値として狙われやすいのは、ひび割れ率40%/わだち掘れ量40mm/IRI 8mm/m の3点セット。これは「要修繕」の管理指標とも一致するため、設計・調査・維持修繕のどの設問でも応用が効きます。あわせて「舗装の信頼性」「性能指標」「ライフサイクルコスト」「中温化技術」「再生骨材」といったキーワードも、改定の文脈で整理しておくと得点源になります。
現場ではこう効く
実務面では、設計が「供用中の性能保持」と「修繕すべきタイミング」を前提に立てられるようになり、維持管理計画とLCCが地続き になります。新技術を室内試験で評価できる枠組みが整えば、新材料・新工法の現場導入も早まります。再生As合材や中温化技術の採用が制度的に後押しされる点は、脱炭素とコスト低減の両面で追い風です。
なお、了承されたのはあくまで 改定の方針 であり、実際の設計などへの適用開始時期は今後の検討事項です(日経クロステックの報道)。確定情報は必ず一次情報で確認しつつ、「設計と点検の指標がそろう」という大きな方向性を、いまのうちに頭に入れておきましょう。
