鉄筋を籠状に組み上げる現場では、下段の鉄筋を確認したくても、後から組んだ上段が視界を遮ることがあります。カメラで配筋を測る技術を使うときも、「どこから撮るか」と「いつ撮るか」が検査計画の要点になります。
鹿島は2026年9月11日、三菱電機エンジニアリングと共同開発した移動式AI配筋検査システムを発表しました。適用先は、なにわ筋線の工事で施工するRC地中連続壁の鉄筋籠です。RC地中連続壁は、鉄筋コンクリートで地中に築く壁で、今回の発表では大深度掘削の山留めや止水壁としての用途が示されています。鹿島の発表資料
注目したいのは、移動する装置と、組立途中に検査する運用を組み合わせた点です。施工管理を学ぶ人にとって、計測技術を工程へどう組み込むかを考える事例になります。
カメラを動かし、組み上がった範囲から測る
装置は、2台のステレオカメラと1台のタブレットを門型の移動装置に取り付けた構成です。鉄筋籠に沿って装置を移動させ、撮影・計測したデータをタブレットで統合します。対象工事では鉄筋籠30基をそれぞれ5ロットに分け、下段、上段の組立進捗に合わせて段階的に検査しました。
鹿島によると、この工事での発注者の立会検査時間は、鉄筋籠1基当たり約300分から約100分となり、同社は約70%の削減としています。比較対象はスケール等を用いた従来の検査方法です。これは当該工事の立会時間の実績であり、検査の全作業時間や人件費の削減率を示したものではありません。また、検査関係者が鉄筋籠上を歩く必要がなくなったと報告されています。構成・適用結果
ステレオカメラは、左右のカメラを組み合わせた装置です。三菱電機エンジニアリングが2022年12月に発表した端末「Field Bar FB-100」では、撮影画像から鉄筋の本数、径、間隔を自動計測し、画像上に結果を重ねて表示する機能が紹介されています。画像と数値を対応づけて確認できるのが特徴です。なお、この既存端末の仕様や効果を、そのまま今回の移動式システムの性能値として扱うことはできません。既存端末の公式説明
画像計測を使う範囲を先に決める
制度面の参考になるのが、国土交通省の2023年7月「デジタルデータを活用した鉄筋出来形計測の実施要領(案)」です。対象は場所打ちコンクリート構造物の鉄筋組立てで、画像計測の対象項目は鉄筋本数、径、間隔。かぶりや重ね継手長、定着長なども、使用機器に応じた精度検証を伴って計測することは妨げない、という整理です。
同要領では、施工計画書に適用範囲、使用機器、データ処理、現場での精度確認方法などを記載します。奥側の鉄筋、過密配筋、逆光や暗所などでは撮影困難や精度低下があり、従来方法の併用も検討事項です。鉄筋径については、誤判定を避けるため、現場ごとに1回以上、計測対象の少なくとも1本をロールマークまたはノギス等による実測で確認するとしています。実施要領(案)1.2・1.5・3.3
個別工事に導入する際は、その工事の契約図書と発注者との協議内容に照らして、適用条件を確認したいところです。「画像から数値が出た」というだけで確認を終えるのではなく、対象部位に合う精度を確保できたか、その結果がどの鉄筋を表すかまで追える計画にすることが大切です。
試験ではこう問われる
学習では、装置名よりも配筋図を読む基礎につなげましょう。1級土木・2024年度の配筋図の問題では、ボックスカルバートの頂版・側壁などについて、鉄筋の配置位置、径、間隔を読み分けます。まず部材を特定し、次に内面・外面、上面・下面を確認し、対応する鉄筋記号と寸法を追う順序が有効です。
同じ見方を画像計測へ置き換えると、「どの部材の、どの面の、どの鉄筋を測ったか」が先に来ます。別の段や別の部材の設計値と比較してしまえば、計測値が正しくても確認は成立しません。ここは本事例から学習へ引き寄せた整理です。
寸法の意味も区別しましょう。かぶりは鉄筋表面からコンクリート表面までの最短距離、鉄筋のあきは隣り合う鉄筋の表面間の最短距離です。数値だけを覚えるのではなく、図に「どこからどこまで」を描いて説明できると、配筋図と検査記録を結びつけやすくなります。
現場ではこう効く
本事例を踏まえた実務上の提案は、組立順序と撮影時点を一つの計画で扱うことです。下段が見えるうちに測る範囲を定め、ロットと撮影データの対応を決め、撮影できない箇所には別の確認方法を用意します。どの時点で誰が結果を確認するかまで決めると、次の組立作業へ進める条件も共有しやすくなります。
記録の整理では、ロット番号だけでなく、図面上の部位、上下段、撮影した範囲を対応づける運用を提案します。再確認が必要になったとき、数値の一覧から元画像と対象位置へ戻れることを目指します。これは、実際の寸法や形状を設計と照合する出来形管理の考え方にもつながります。
導入効果を評価する際も、立会時間のほかに、準備、撮影、解析、帳票整理の時間をそれぞれ記録すると、自分の現場で何が変わったかを説明しやすくなります。約70%という事例の数字を目標へ直結させる前に、現在どの作業に時間がかかっているかを把握する、という使い方です。
今回の技術から読み取れる施工管理上の要点は、計測機器の選定と検査の段取りを一緒に考えることです。組立途中の見える状態を活用し、測った位置と結果を追えるようにする。その準備が、画像計測を現場で役立つ確認へつなぎます。
出典
- 鹿島建設「移動式AI配筋検査システムを開発」(2026年9月11日)。移動式システムの構成、適用工事、立会時間の比較。
- 国土交通省 大臣官房技術調査課「デジタルデータを活用した鉄筋出来形計測の実施要領(案)」(2023年7月)。画像計測の適用範囲、精度確認、従来確認との関係。
- 三菱電機エンジニアリング「AI配筋検査端末『Field Bar® FB-100』を発売」(2022年12月21日)。ステレオカメラによる既存端末の計測・表示機能。

