路面のひび割れやわだち掘れを調べることと、舗装が荷重を支える状態を調べることは、同じ調査ではありません。修繕を考えるとき、「表面に何が起きているか」に加えて「舗装構造としてどう働いているか」を知りたい場面があります。
その構造の調査を広い区間で進める技術として、移動式たわみ測定装置(MWD)が、2026年9月8日の「土研新技術ショーケース2026 in 東京」で紹介されました。舗装の調査・維持修繕に関わる担当者にとって、測定方法を選ぶ入口になる資料です。この日付は紹介イベントの開催日であり、同日に開発が完成した、発売された、全国への導入が終わったという意味ではありません。土木研究所・開催案内
自車輪の荷重で生じる変形を、走行中に測る
MWDはMoving Wheel Deflectometerの略です。資料の装置は中型車両に計測機器を搭載し、自車輪の荷重によって生じる舗装のたわみを走行中に連続計測します。たわみとは、荷重を受けた舗装が変形する量のことです。舗装を壊さず、荷重に対する応答から構造の健全性を調べる「非破壊調査」に当たります。土研・MWD紹介資料
土木研究所の技術情報でも、MWDは道路分野の準重点普及技術として掲載され、舗装構造の健全性の調査に用いる技術として説明されています。路面下を画像として直接撮影する装置と捉えると、測っているものを取り違えてしまいます。土木研究所「技術情報」
ここで大切なのは、見たいものと実際に測るものを区別することです。知りたいのは構造の状態でも、得られるのは荷重による変形のデータです。そのデータをどう評価し、必要な確認にどうつなげるかまでを、調査の目的として考える必要があります。
FWDとの違いは「荷重の与え方」と「測定の進め方」
既設舗装の調査で使われるFWDは、Falling Weight Deflectometerの略で、日本語では重錘落下式たわみ測定装置です。重錘を落下させて衝撃荷重を与え、荷重計と複数の変位計で応答を測定します。たわみの量や分布は、舗装全体の支持力や各層の状態を評価する材料になります。土研舗装チーム・FWD検定施設資料
両者は「たわみを使って構造を調べる」という点でつながりますが、MWDを「走行中に重錘を落とすFWD」と覚えてはいけません。
| 装置 | 荷重の与え方・測定方法 |
|---|---|
| MWD | 自車輪の荷重によるたわみを走行中に連続計測 |
| FWD | 重錘落下の衝撃によるたわみを複数の位置で測定 |
MWDの紹介資料は、交通を乱さず、交通規制を伴わない調査が可能と説明しています。一方、開削、コア採取、FWD調査は交通規制が必要で、広域調査に制約があることを示しています。これは調査範囲を広げる際の違いであり、詳細調査の価値がなくなるという比較ではありません。MWD紹介資料・従来調査との比較
また、交通規制を伴わない測定方法という説明から、個別道路での安全計画や必要な手続が不要だと読み替えることはできません。
路面性状の調査と、構造の調査は答える問いが違う
表面の状態を表す路面性状と、荷重を支える構造の状態は分けて整理しましょう。試験でも、路面性状測定車が測るひび割れ・わだち掘れ・平たん性と、FWDで評価する支持力特性・構造健全性が区別されています。
この区別に立つと、表面の状態を把握しただけで構造についての判断も終わった、とはいえません。逆に、たわみの測定だけで、補修する層や工法を自動的に決められると考えるのも早計です。調査結果が答えられる問いの範囲を確認することが、次の調査や修繕設計へのつなぎ方を考える助けになります。
試験ではこう問われる
1級舗装・令和8年のNo.33は、既設舗装の調査・評価を扱います。路面性状測定車による測定対象と、FWDによる構造の評価を分ける問題です。不適当なのは、維持管理指数(MCI)がすべり抵抗性を重視するという記述。MCIの算出要素はひび割れ率・わだち掘れ量・平たん性で、すべり抵抗性は含まれません。
1級舗装・令和6年のNo.11は、既設舗装の修繕における構造設計を問います。FWDの載荷板直下のたわみ量による全体支持力の評価や、測定結果の逆解析による各層の評価は、適当な記述です。不適当なのは、わだち掘れ量からアスファルト混合物層の残存等値換算厚を求めるという記述です。
逆解析は、測定した応答から材料の性質などを推定する考え方です。残存等値換算厚は、既設舗装に残る構造的な能力を厚さに換算して評価する指標です。両問はFWDや既設舗装の評価を扱い、MWDの仕様を問うものではありません。学習上は、測定する量、評価する対象、設計に用いる結果の順で整理すると、装置や指標を入れ替えた選択肢を見分けやすくなります。
現場ではこう効く
紹介資料は、MWDによる広域調査から健全性の低下した区間を抽出する活用を示しています。ただし、調査方法の整理は土研の研究課題で、精度向上や舗装管理への活用も研究で検討中です。完成済みの全国共通手順として扱う段階ではありません。MWD紹介資料・活用と研究の方向
以下は、資料を踏まえた編集上の運用提案です。広域の構造調査で確認したい区間を絞り、必要な箇所をFWDや開削などの詳細な確認へつなげる使い分けが考えられます。新たな法定必須手順を述べるものではありません。
調査前には、「管理区間のどこを優先して確認するか」「修繕設計のために何を確かめるか」など、今回の目的を明確にすることを提案します。路面性状の記録と構造の調査結果を同じ区間で整理し、追加確認が必要な箇所と、その理由を残しておくと、次の判断へつなげやすくなります。
構造的対策は、舗装の耐荷重性(支持力)を回復させる補修です。MWDの特徴は、走りながら舗装の変形を測り、構造についての情報を広い区間で集められることです。その情報を詳細確認に結び付ける位置付けで読むと、路面の見た目と支持力の回復を混同せず、調査の役割を整理できます。

