コンクリートを低炭素型へ切り替えるとき、配合表のセメント記号を変えるだけで十分だろうか。NEXCO総研が公開した「コンクリート施工管理要領 令和8年7月」の改定資料を読むと、答えは明確に「それだけではない」。材料選定と同時に、養生、ひび割れ対策、試験結果の扱い、製品検査までを一続きで見直す改定になっている。
まず範囲をはっきりさせておきたい。この要領は、NEXCOが施工・管理する道路の建設・維持修繕で、コンクリート工事の施工管理基準を示すものだ。国内の全コンクリート工事に一律適用される法律やJISではなく、試験方法や構造物の設計基準そのものを収録した資料でもない(NEXCO総研の商品案内)。したがって現場では、契約図書に採用された版と適用区分を確認することが出発点になる。
改定の芯は「材料」と「施工管理」のセット
改定概要では、CO2排出量の削減を目的とする環境配慮型コンクリートの標準化を受け、コンクリート品質基準におけるセメント種類を変更したことが最初に挙げられている。新旧対照表を見ると、複数のコンクリート区分で普通ポルトランドセメントを表す「N」と高炉セメントB種を表す「BB」の併記から、BBを標準とする表記へ改められている。ただし注11では、対象区分でも供給能力などの事情により普通ポルトランドセメントを使用できるとしている。また、すべての区分が同じ変更ではない。「NEXCO工事なら全部BB」「対象区分では例外なくBB」と一般化せず、構造物・部位・要求性能ごとの表と注記を読む必要がある。
今回の改定は、セメント種類の表記だけで終わっていない。マスコンクリートの解説には高炉セメントB種を使った場合の収縮ひび割れ事例が加えられ、湿潤養生日数の目安も表で整理された。材料の変更を施工段階の管理へつなぐ意図が表れている。
新たに示された湿潤養生日数は、コンクリート標準示方書(施工編)をもとにした参考値で、次のようにセメント種類と日平均気温で変わる。
| 日平均気温 | 早強ポルトランド | 普通ポルトランド | 高炉B種 | フライアッシュB種 |
|---|---|---|---|---|
| 15℃以上 | 3日 | 5日 | 7日 | 7日 |
| 10℃以上 | 4日 | 7日 | 9日 | 9日 |
| 5℃以上 | 5日 | 9日 | 12日 | 12日 |
これは「どの現場でもこの日数で終了してよい」という一律の下限ではない。新旧対照表には、海水、アルカリ、酸性の土や水などの侵食を受ける場合は期間を延ばす必要があるとも記されている。気温だけで日数を決めず、部位、露出条件、型枠の有無、乾燥や風、要求性能を施工計画へ落とし込むことが肝になる。
試験ではこう問われる
試験で狙われやすいのは、セメントの名称より性質と施工上の対応の組合せだ。過去問でも「混合セメントB種の湿潤養生期間は普通ポルトランドセメントと同じか」「マスコンクリートの表面を急激に冷やしてよいか」といった形で問われている。
覚える軸はシンプルでよい。今回の7月版に示された目安では、同じ気温なら高炉セメントB種の湿潤養生日数は普通ポルトランドセメントより長い。マスコンクリートでは内部と表面の温度差を急に広げない。15℃以上で「早強3日・普通5日・高炉B種7日」という並びは、過去問知識と実務基準がつながる箇所だ。ただし試験では、設問が根拠とする示方書・仕様書の条件を確認して答えたい。
また改定概要は、硬化コンクリートの圧縮強度・曲げ強度の日常管理で異常が見つかった場合、試験結果を速やかに提出するよう改めたとしている。強度試験は合否の数字を覚えるだけでなく、異常を検知した後の報告と対応までが品質管理だという出題・実務双方の視点を持っておきたい。
現場ではこう効く
施工計画書を見直すなら、少なくとも三つの接点がある。
一つ目は、配合と調達の確認。対象となるコンクリート区分、セメント種類、生コン工場の供給体制を、最新版の表・注記と契約図書に突き合わせる。従来配合の流用や、全区分への機械的な横展開は避けたい。
二つ目は、養生を工程表へ組み込むこと。打設日の日平均気温だけでなく、脱型後の乾燥、直射日光、風、侵食環境までを見込み、給水、シート、膜養生、保温などの手段と確認者を決める。BBへの変更で養生期間が延びれば、脱型、支保工、後続工種、検査日にも影響する。
三つ目は、検査と報告の経路。改定にはJIS改正を受けた製造設備の試験項目の見直しや、プレキャストボックスカルバートの工場・現場検査の整理も含まれる。試験値の異常を誰が判断し、誰へ、どの資料で、いつ報告するかを打設前に決めておけば、異常時の初動を短くできる。
低炭素材料への転換は、材料担当だけの仕事ではない。セメントの選択を、養生計画、工程、検査、記録へつなぎ直すところに施工管理の役割がある。今回の改定は、その当たり前を具体的な管理項目として再確認させる内容だ。
出典
- NEXCO総研「コンクリート施工管理要領 令和8年7月【電子版】」
- NEXCO総研「コンクリート施工管理要領 令和8年7月 改定概要」
- NEXCO総研「コンクリート施工管理要領 新旧対照表(令和7年7月版・令和8年7月版)」

