「ICT活用工事」は、もう“やってみる人だけのもの”ではなくなりつつあります。国土交通省は令和8年度(2026年度)、ICT施工を発注者が指定する「発注者指定型(原則化)」の対象を、土工・河川浚渫工に続いて舗装工・地盤改良工へ広げる方針を示しました。受験勉強では「情報化施工」や「ICT建設機械」として出題され、現場では入札・出来形管理・総合評価に直結するテーマです。何が、いつ、どう変わるのかを整理します。
背景:i-Construction 2.0と「2040年に省人化3割」
国土交通省は令和6年4月、建設現場の生産性向上策を「i-Construction 2.0 〜建設現場のオートメーション化〜」としてとりまとめました。狙いはシンプルで、2040年度までに2023年度と比べて建設現場で3割の省人化、すなわち生産性を1.5倍以上に高めること。その手段として、(1)施工のオートメーション化、(2)データ連携のオートメーション化、(3)施工管理のオートメーション化、という「3本の柱」を掲げています(i-Construction 2.0)。
なぜここまで踏み込むのか。背景には深刻な担い手不足があります。生産年齢人口は2040年に現在から約2割減少すると見込まれ、建設業は55歳以上の比率が全産業平均より高い一方、若手の入職は緩やかです。インフラ管理の最前線でも、全国の市区町村の約4分の1で土木系の技術職員が配置されていないとされます。人を増やせない以上、「少ない人数で同じ仕事を回す」しかない——ICT施工の原則化は、この大きな流れの一里塚です。
ここで言うICT施工とは、起工測量から設計・施工・出来形管理・納品までの各段階で、3次元データやICT建設機械(マシンコントロール/マシンガイダンス)を全面的に使う工事のこと。試験で問われる「情報化施工」は、まさにこの考え方の土台にあたります。
令和8年度の変更点をかみ砕く
国交省は令和8年2月25日の第22回ICT導入協議会で、ICT施工の「原則化ロードマップ(案)」を示しました(資料-1)。要点は次の3つです。
(1) 原則化の対象が広がる 発注方式には、発注者があらかじめ指定する「発注者指定型」と、施工者が手を挙げる「施工者希望型」があります。ロードマップでは、令和7年度に土工・河川浚渫工が発注者指定型で原則化され、令和8年度はその発注者指定型を舗装工・地盤改良工へ拡大、令和9年度以降はさらに対象工種を順次広げる、という段取りです。舗装工・地盤改良工はまず「原則化に向けた措置」として発注者指定型を広げる位置づけで、すでに高い実施率を踏まえた現実的なステップといえます。
(2) すでに現場は追いついている 令和6年度のICT実施率は、土工が約89%、河川浚渫(港湾)が100%。そして舗装工は約75%(発注者指定型では100%、施工者希望型で70%)、**地盤改良工は約86%**に達しています。「原則化」は号令というより、現場の実態を制度が後追いで追認するイメージに近いわけです。
(3) 面積の目安とStage IIの加点 舗装工の発注者指定型は、舗装面積1万㎡以上が目安。1万㎡未満は施工者希望型(II型)が目安です。対象は、アスファルト舗装工・半たわみ性舗装工・排水性舗装工・透水性舗装工・グースアスファルト舗装工・コンクリート舗装工(および付帯道路工)と幅広く設定されています(ICT活用工事(舗装工)実施要領)。あわせて、施工データを使いこなす「ICT施工Stage II」が令和8年度から総合評価落札方式の加点対象へ格上げされます。単に3次元で施工するだけでなく、そのデータを施工計画の最適化に活かす段階が、入札で評価されるようになります。
ICT舗装工は「5つの段階」で動く
ICT活用工事(舗装工)は、次の①〜⑤すべての段階でICT施工技術を使う工事と定義されています。
- 3次元起工測量(レーザースキャナーやTS等で面的に計測)
- 3次元設計データの作成
- ICT建設機械による施工(3次元MC=マシンコントロール建機などで敷均し・転圧)
- 3次元出来形管理等の施工管理
- 3次元データの納品(電子納品)
注目したいのが④の出来形管理です。従来の「代表点を測る」点的な管理に対し、ICT舗装工では**出来形管理図表(ヒートマップ)**を作り、1点/㎡以上の点密度で面的に良否を判定する「面管理」が原則になります。仕上がりが一目で「見える化」され、不陸(凹凸)の偏りも面でつかめる——ここが情報化施工の最大の強みです。試験で問われる「面的な締固め管理」「面管理」の発想は、舗装でも土工でも共通の幹だと押さえておくと応用が利きます。
試験ではこう問われる
ICT・情報化施工は、土木・舗装の施工管理技士試験で頻出テーマです。出題の角度はおおむね決まっています。
- 情報化施工(TS・GNSS)の原則:上空視界が遮られる場所ではGNSSの精度が落ちるためTSを用い、双方が困難な死角では従来のRI計器・砂置換法などで点的に補う——という「使い分け」。
- 面管理 vs 点管理:ICT建機の利点は「代表地点の確認」ではなく「**施工範囲全域(面的)**の品質確保」にある、という締固め管理の本質。
- 出来形管理の方法:何を、どの頻度で、誰が測り、誰が検査するか(施工者が管理し、発注者が検査する)という役割分担。
過去問では、TS・GNSSを用いた盛土の情報化施工(1級土木 令和7年度 No.8)や、ICT建設機械を含む盛土の締固め品質管理(2級土木 令和7年度 No.66)、舗装の出来形管理の検査方法(1級舗装 令和6年度 No.49)などが代表例です。制度が原則化へ動くほど、この領域の出題比重は高まると考えておくのが安全でしょう。
現場ではこう効く
実務面のインパクトは大きく3つです。
第一に、1万㎡以上の舗装・地盤改良は「ICT前提」で積算・人員計画を組む必要が出てきます。発注者指定型が広がれば、ICT建機の手配や3次元データの作成体制が、受注の入口条件になっていきます。
第二に、Stage IIが点に直結します。国交省が示した取組事例(九州地方整備局・菊池川河川事務所)では、対象土工67,580㎥について、複数現場のダンプ運行を施工計画段階でシミュレーションし、運搬作業量を24%増(810→1,008㎥/日)、工程を82日から67日へ15日短縮、作業員を延べ6,724人から4,623人へ(約2,101人削減)まで圧縮しました。データを「測る」だけでなく「活かす」と、ここまで効く——それが加点される時代になります。
第三に、中小企業ほど準備の前倒しが効く点です。実施率がすでに7〜8割に達していることは、裏を返せば「未対応のままだと受注機会で不利になりやすい」ことを意味します。まずは1万㎡前後の案件で、起工測量〜出来形管理の一連を3次元で回す経験を積むことが、最短の備えになります。
人を増やせない時代に、同じ品質を少ない人数で——ICT施工の原則化は、その現実解を制度として固める動きです。試験勉強でいま情報化施工を押さえることは、そのまま明日の現場の標準装備を学ぶことにつながります。
出典
- 国土交通省「i-Construction 2.0 〜建設現場のオートメーション化〜」(令和6年4月)
- 国土交通省 第22回ICT導入協議会 資料-1「トップランナー施策等について」(令和8年2月25日)
- 国土交通省「ICT活用工事(舗装工)実施要領」
本記事は公表資料をもとに要約・解説したものです。最新の運用や面積要件等の詳細は、発注機関の入札公告・特記仕様書および国土交通省の各実施要領をご確認ください。

