2026年6月2日、国土交通省が「第3次無電柱化推進計画」を決定しました。令和8年度を初年度とする5年間で、新たに約1,000kmの整備完了を目指すという内容です。電柱と電線を地中などに移す「無電柱化」は、景観の話と思われがちですが、いまや災害に強い道路をつくる防災施策であり、施工管理技士の試験でも頻出の「道路占用」と地続きのテーマです。今回は、第3次計画の要点と、現場・試験へのつながりを整理します。
背景:日本の道路はなぜ「電柱だらけ」なのか
電線を地中化した街並みは、海外では珍しくありません。国土交通省の資料によれば、ロンドンやパリなどの欧州主要都市、香港やシンガポールなどのアジア主要都市では無電柱化がほぼ概成しているのに対し、**日本は道路延長ベースで東京23区が約8%、大阪市が約6%**にとどまります。しかも電柱は減るどころか、撤去本数を新設本数が上回る状態が続き、なお年あたり数万本のペースで増えてきました。
普及が進まない最大の理由はコストと施工の難しさです。電線共同溝による地中化は1kmあたり高額になりがちで、狭い歩道の地下には水道・ガス・通信といった既設の埋設物がひしめき、それらを避けながら管路や特殊部(地上機器の基礎やマンホール状の構造物)を入れる工事は手間がかかります。国土交通省によれば、全国約1,700の市区町村のうち無電柱化を実施した経験がある自治体は約400(およそ4分の1)にとどまり、ノウハウの裾野もまだ狭いのが現状です。
第3次計画の要点:5年で1,000km、3つの柱
第3次無電柱化推進計画は、無電柱化の推進に関する法律(無電柱化法)第7条に基づく国土交通大臣決定の計画です(報道では「閣議決定」と表現される場合もありますが、計画そのものは大臣決定です)。計画期間は令和8年度を初年度とする5年間で、新たに整備完了延長 約1,000kmを掲げ、あわせて約4,000kmの計画策定を目指します。前計画(第2次・令和3〜7年度)が約4,000kmの整備推進を掲げていたことを踏まえると、「計画づくり」と「完成」を分けて管理し、着実に仕上げる方向に軸足が移ったと読めます。
今回の計画は、次の3つの柱で目標を整理しているのが特徴です。
| 柱 | ねらい | 主な取り組み |
|---|---|---|
| ① 道路啓開(防災) | 災害時に救援ルートを早く開ける | 高速道路ICと県庁等を結ぶ区間を「優先整備区間」に選定し、今後30年でおおむね完成 |
| ② 通学路(安全) | 子どもの事故リスクを下げる | 通学路を対象とした目標値を設定 |
| ③ 景観(観光・地域) | 切れ目のない街並みをつくる | 市町村の計画策定を促し、景観・観光部局等との連携を強化 |
ポイントは、無電柱化が**「景観美化」から「防災インフラ」へと位置づけを変えている**ことです。地震や台風で電柱が倒れると、道路をふさいで緊急車両の通行(道路啓開)を妨げ、断線による停電や二次災害も招きます。激甚化・頻発化する災害に備え、まず幹線の救援ルートを確実に通すという発想が、優先整備区間の考え方に表れています。
試験ではこう問われる
無電柱化そのものはまだ過去問の定番論点ではありませんが、その土台にある**「道路占用」のルールは土木・舗装の法規で頻出**です。整理しておきましょう。
- 電柱は「道路占用物件」であって「道路附属物」ではない。ガードレールや道路標識・道路照明のように道路管理者が道路の効用のために設ける施設が道路附属物で、電柱・電線・公衆電話などは別目的で道路の敷地を借りる占用物件です(2級舗装 令和7年 問35で問われています)。
- 電柱・電線・上下水道管を道路に設けて継続使用するには、道路管理者の「道路占用許可」(道路法第32条)が必要。これは占用許可の最も典型的な対象です(1級土木 令和元年 問56)。
- **占用物件の維持管理責任は、道路管理者ではなく占用者(電力会社・通信事業者等)**にあります(1級舗装 令和6年 問56)。
無電柱化はこの構図を物理的に組み替える事業です。地上の電柱(占用物件)を減らし、代わりに地中の電線共同溝へ収容する。**「誰が・どの空間を・どう占用しているか」**という視点で読むと、制度と工事が一本の線でつながります。
現場ではこう効く
施工管理の立場で見ると、第3次計画は今後5年の電線共同溝・地中化関連の発注増を意味します。市街地の歩道という限られた空間での工事が多くなるため、次の段取りが効いてきます。
- 既設埋設物との近接施工:試掘で水道・ガス・通信の位置を確認し、占用者との立会い・防護協議を前広に行う。発注前の埋設物照会と工程への織り込みが工期を左右します。
- 道路占用許可と道路使用許可の使い分け:道路に管路や地上機器を継続的に設けるのは道路管理者への道路占用、工事で車両を停めて作業する一時使用は警察署長への道路使用許可。管轄が違う点は実務でも試験でも要注意です。
- 狭隘部の品質・出来形管理:歩道の限られた土被りに管路と特殊部を納めるため、線形・離隔の管理がシビアになります。低コスト手法(浅い位置に埋設する手法や小型ボックスの活用など)の採否も、現場条件に応じた判断が求められます。
無電柱化は「景観の話」で終わりません。災害に強い道路をつくり、歩道のバリアを減らし、街並みを整える——その実務の最前線にいるのが施工管理技士です。試験で道路占用を学ぶときは、ぜひ「電柱のない街をどうつくるか」という現場の視点もあわせて持っておきましょう。
出典
- 国土交通省「第3次無電柱化推進計画」を決定(報道発表・令和8年6月2日)
- 国土交通省 道路局「無電柱化の推進」
- 国土交通省「資料集:無電柱化の整備状況(国内、海外)」

